2024年5月に「国定公園」から「国立公園」へと格上げされることが決まり、北海道内では37年ぶりに「新しい国立公園」が誕生します。
ここまでは、まあ「喜ばしいニュース」です。
しかし、新しい国立公園の名称を巡っては、違和感だらけという現実が…
とにかく長い、長すぎる! 『日高山脈襟裳十勝国立公園』という新名称
最初に記しておきますが、ジブンは『日高山脈国立公園』というシンプルな名称プラン推しでした。あくまで主体は「日高山脈」にあるわけですし、ならば名称は「日高山脈」で「こと足りる」と考えたからです。「十勝」という文字を加える必要性など、微塵も考えていませんでした。
ですが、環境省が採用した新名称は『日高山脈襟裳十勝国立公園』でした。
従来の『日高山脈襟裳国定公園』という名称に、新たに「十勝」という文字が付加されました。
採用の理由や背景はさておき、「十勝を加える必要がある」と主張するのならば、『知床国立公園』を「知床半島宇登呂羅臼国立公園」にしなくて良いのですか? などと「イヤミ」のひとつも言いたくなりますww
つまるところ『日高山脈襟裳十勝国立公園』では冗長過ぎると感じます。公的文書や組織名などにありがちな「情報てんこ盛り状態」とでもいうべき「イケてないネーミング」と感じてしまうわけでして…。
視認性、可読性は「定着度」を大きく左右すると思う
第一、ぱっと見、画数モリモリの字面『日高山脈襟裳十勝国立公園』で目にとまるのは「日高」の2文字、もしくは「日高山脈」の4文字がせいぜいでしょう。
もっとも、それで「用が足りる」といえば足りると言えるのかも知れませんね!
また、国定公園だったこれまでも、正式名称である『日高山脈襟裳国定公園』ではなく、「日高山脈国定公園」との認識(誤認)が多数を占めているのではないかと推察しています。
もっといえば、12文字も費やしてしまう長ったらしい「正式名称」は、HP(Webサイト、投稿)や案内パンフレット、情報誌紙では使いにくい。できれば「使用は避けたい…」というのがクリエイターとしての率直な感想だったりします。
文字数にシビアにならざるを得ないタイトルや見出し周りなどでは特に、『日高山脈襟裳十勝国立公園』は絶対にイヤww
それに、そのうちきっと皆が「日高山脈国立公園」と呼びたくなる!…はず。そして「正式名称は何?」といったクイズネタになってしまう日が来るのかも。
また、英語表記でも「固有名詞(地名)モリモリ」過ぎて、ややこしくなりそうではないですか!?
おそらく各地の道路(国道)上に設置される(であろう)案内看板、いわゆる「青看板」についても、「日高山脈襟裳十勝国立公園」と記されていたとしたら、日本語ネイティブであっても〝瞬時の認識〟は難しそう。。
そのようなことなど考えつつ、正式名称(フルネーム)は、果たしてどれだけ定着(浸透)するでしょうか。今後も注目していこうと思っています。
…とか言いながら、当記事では、ばっちりフルネームをタイトルとして使用しておりますが。。
対案となるはずだった『日高山脈国立公園』のほうが遥かにしっくり来る
新たに誕生する『日高山脈襟裳十勝国立公園』は、重ねて記しますが、元の「国定公園」から「国立公園」への格上げによって誕生します。ちなみに、国定公園としての正式名称は『日高山脈襟裳国定公園』でした。
この名称に「十勝」を加えることを日高側、十勝側に位置する13市町村長(首長)が要望し、環境省が主管する「中央環境審議会自然環境部会」での審議を経て決定されたのが、『日高山脈襟裳十勝国立公園』という新名称です。
細かな経緯などは省きますが、新名称選定の審議に際しては当初、既存の国定公園名に「十勝」を盛り込む13市町村長案のみが環境省から提示されたといいます。
審議会への名称案提示の際、山岳関係団体や自然保護団体などが推していた新名称案『日高山脈国立公園』は同省によって完全スルーされ、審議会の場への提示すら無かったと報じられていました。
なんだべなあ!
あれこれ透けて見えてくる「大人の事情」といったところでしょうか…。
いずれにしても、本来なら「対案」となるはずだった『日高山脈国立公園』のほうが「遥かにしっくり来る」と思ってしまったのでした。
新名称は『日高山脈国立公園』で良いのでは? とする根拠(…らしきネタ)を記してみます
このまま言いたい放題では少々後味が悪いので、ジブンなりの「意見(根拠)」を記してみようと思います。
地理院地図(地形図)
さし当たっては、山(ヤマ)をやる皆様にはお馴染みであろう「地形図」です。
上記の画像とリンクは、国土地理院が公開している『地理院地図(電子国土Web)/GSI Maps』での表示です。
ばっちり「日高山脈」の文字を確認できます。
にもかかわらず、下記動画に見られるように、13市町村からの要望の一つとして、観光客や利用者に「地理的な位置をわかりやすくするために【十勝】を入れてほしい」と主張されていましたが、それではちょっと「弱い」ような気がします。
ニュース動画へのリンクを再掲。審議会のおおよその様子がわかります。
なぜなら、「日高山脈の地理的位置関係を知らない人」は「十勝の地理的位置関係も知らないだろう」と思うからです。そしてそうした方々は、今後も恐らく「日高山脈襟裳十勝国立公園へLet’s Go!」とはならないと思います。
これは極論かも知れませんが、北海道の地理的位置関係を知らない人が、積極的に「北海道に行ってみよう!」と考えるものでしょうか?
翻って、「十勝追加」を主張する方がイメージしていらっしゃるのは、たとえばですが、
「襟裳岬への観光」に訪れた方が、「国立公園名を示す看板など」を目にした際、
「十勝というエリア名を目に触れさせたい」といったようなニュアンス
ということなのでしょう。
だとしたらその考え方は、もはや「観光案内の一種」なのでは?
たしかに「国立公園」を定義する要素としては、
「自然に親しむ利用がし易いように、必要な情報の提供や利用施設を整備(後略/環境省)」
とされています。
しかしそこに、「観光案内的な要素」を入れ込んでしまっては、
「日本を代表するすぐれた自然の風景地を保護するために開発等の人為を制限する(後略/環境省)」
といった「保護の側面」とそぐわなくなってしまうと思います。
「十勝」の文字を加え、「屋上屋(おくじょうおく)を架す」意味は何?
改めて地図を。
この「日高山脈」という文字の左右(東西)に位置しているのが、日高(左/西側)と十勝(右/東側)にある市町村。また、下端(南端)の尖った部分が「襟裳岬」です。襟裳岬は、山脈が太平洋に沈んでいく「日高山脈の最南端」とされています。
山脈の裾野に広がる日高、十勝の両地域をカバーし、日高山脈が太平洋に没する襟裳岬までカバーし得る「日高山脈」という名称・呼称。そこに過不足は無いと思うのです。
どのように受け止めるか? は、ご覧いただく皆様の「主観」によるものかも知れません。
ですが、少なくとも「山脈で隔てられている」という事実を知っている北海道民であれば、日高山脈は「国境」といった認識を持っていますし、「日高山脈」と聞けば、「日高(道央)と十勝(道東)を分かつ山脈」とのイメージを思い浮かべられます。
つまり、エリアを指し示す「日高山脈」との表現に対しては、既に「日高と十勝を含んでいる」という認識。
だとしたら、「日高山脈」に「十勝という語(文字)」を加える意味とは!?